SEEDS:VOICE 寄附者の声 世界でナンバーワンになるために 五十嵐一衛氏 1964年 千葉大学薬学部卒/1966年 千葉大学大学院 薬学研究科修士課程修了/1971年 薬学博士(東京大学)/千葉大学名誉教授/株式会社 アミンファーマ研究所代表取締役社長

ガン、心臓疾患、脳疾患。三大死因のうち、脳疾患だけがバイオマーカーが存在しなかった。突然やってくる、沈黙の殺人者。
人間が抱え続けたこの恐れに、光明をもたらしたのは千葉大学名誉教授であり、株式会社アミンファーマ研究所代表取締役社長の五十嵐一衛氏。世界初の「脳梗塞マーカー」をつくりあげ、実用化させた。千葉大学OBをはじめ、わずか10名からなる少数精鋭のグループを率いる氏に、事業の話や寄附によせる想いをお伺いした。

自覚症状がない「かくれ脳梗塞」に対して、血液検査のみで約85%の精度でもってリスク評価をするのが「脳梗塞マーカー」です。アミンファーマでは、このバイオマーカーを関東地方を中心として全国の病院に提供しています。マーカーの核となるのが、薬学研究院時代から研究していた「アクロレイン」という細胞障害物質の発見でした。脳梗塞発症後の患者では細胞が壊れるに従い、血中のアクロレイン量が増加することがわかったんです。

アクロレインの働きを発見したとき、すごく画期的で「面白い!」と思いました。
なぜならアクロレインは、「ポリアミン」という細胞増殖に必要な物質からつくられるのですよ。生命にとって必要な物質が、細胞の外に出ると「アクロレイン」という細胞障害物質に変わる。私たちはそもそも「ポリアミン」の方の研究をしていたのですが、どうしてこの生命に必要なものが壊す方に働くんだと。すごく矛盾で、すごく面白いことだと思って、その探究心から研究を重ねていきました。

現在、全国で年間約2万人の方に受けていただいていますが、もっと拡げていけたらと思います。家族や親戚に脳梗塞歴があったり、血圧の高い方は、40代50代になったら一度受けてみてほしいですね。うちはみな脳梗塞家系だから、私は毎年受けてるんですよ。じつはアクロレインが高めなので(笑)、毎日歩いて、薬を飲んで。調べれば、ちゃんと予防ができるわけです。

私の田舎は新潟で、実家では薬屋をやっていました。親は実家を継いでもらいたかったんじゃないかと思うけど、でも「好きなことをやれ」っていってくれて。大学院での修士課程修了後、研究を続けるためにアメリカのペンシルバニア大学へ行くことになったとき、親は渡航費を出してくれたんですよ。当時、大卒の初任給が1ヵ月約2万5千円の時代に、アメリカへの片道が約20万円。商売をやっていたから工面しやすかったとは思いますが、なかなかできることじゃないと感謝しています。
学会にしても、昔は海外に行くのはぜんぶ自費だったんですよ。私がSEEDS基金に寄附したのは、若い人たちが学会で発表をするときに旅費をサポートしたいという想いがすべてですね。私が稼いだお金を、少しは若い人に還元したいと。それで、若い人が学会に出られるようになって、世界を見られるようになってほしいなと思います。
日本は島国でかつ住みやすいから、のんびりしちゃってなかなか国を出ない。
でも、学問では、世界でナンバーワンにならきゃいけない。とくに千葉大生は、みんな人柄もよくて穏やかだから、ナンバーワンになろうという人はなかなか少ないように感じますね。私がいろいろな大学の研究室を経験して、千葉大に戻ってきたのは先生と信頼関係があって好きなことをやらせてもらえるから。若い人も外へ出て自分のオリジナリティを追求していくなかで、その道のナンバーワンになってほしいと思います。

アミンファーマが入っているこのイノベーションプラザも、私が副学長のときに千葉大発のベンチャー企業を支援したいため、経済産業省から作っていただいたもの。千葉大学の先生方と研究を進めるなら構内にある方が効率的だろうと。大学構内にこうしたインキュベーション施設が出来たのは、じつは日本初でもあったんですよ。まだまだ「千葉大発」が少ないから、ここにももっとOBでも学生でも入ってにぎやかになってくれたら嬉しいですね。若い人が学問で世界に挑んでいくために、いろいろ応援したいと思っているんです。

今後は「アクロレイン」をベースに、さらに認知症のバイオマーカーも実用化したいと思っているんですよ。母親も認知症で、私のことがわからなくなっている。日本では、認知症の患者は脳梗塞よりも3倍以上の患者がいると言われているんですよ。進行を遅らせる薬はあるわけなので、発見が早ければ格段にクオリティ・オブ・ライフも上がりますよ。
病気で苦しむ人を減らすこと、さらに、大学のサイエンスを社会に還元することを私は目指しています。

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